噂のモーガン夫妻

「出会った時の彼はとてもステキだったの。今でもステキなのがムカつく」

ニューヨーク在住のモーガン夫妻(ポールとメリル)を演じるのはラブコメ界の帝王ヒュー・グラントと、SATCでおなじみサラ・ジェシカ・パーカー。ファンにはたまらない豪華キャスティングです。
ウィキペディアをはじめ、どのレビューサイトにも、「ポールとメリルは誰もがうらやむセレブカップル」みたいなことが書かれているのですが、実際のところ“誰もがうらやむ”ような演出はなく、物語はポールの浮気が原因で別居中の、キリキリした関係から始まります。断固として許してくれないメリルの気持ちをなんとか取り戻そうと食事に誘うポール。その日の帰り道、偶然にも殺人現場を目撃してしまった二人は犯人に命を狙われることになり、証人保護プログラムによってアメリカ中西部のワイオミング州に身を隠すことに。大都会ニューヨークからいきなりド田舎に連れてこられた夫婦がお互いを見つめ直していくというストーリー。

調べてみると、サラ・ジェシカ・パーカーとしては、2008年の映画SATCと2010年のSATC2の間というタイミング。あまりにもSATCのイメージが強すぎて、サラ=キャリーとなってしまっているので(少なくともゆきぴゅーの頭の中ではそう)、観る前は正直、“キャリーにしか見えなかったらどうしよう???”と心配していたのですが、全然そんなことはなくって、ちゃんとメリル・モーガンだったのはさすがだと思いました。ちなみに、衣装さんが特典映像の中で、「サラの衣装選びはとにかく気を使ったよ、ノー、キャリー!ノー、キャリー!だった」と言っていました。

格好良かったのはふたりがワイオミングの田舎でジョギングをするシーン。きっとバーゲン・バーン(観た人はどういうお店かわかります)で3ドルくらいで買ったタンクトップ&スパッツという設定だと思うのですが、そこはさすがお洒落番長のサラ、ステキに格好良く着こなしていました。きっとニューヨークでもこうやってセントラルパークとか走っていたんだろうなーと想像させて、それがすごくセレブリティなイメージとつながっていたと思います。ほら、外国人って朝のワイキキビーチとかよく走ってますものね。

ポールが手に持っているのは熊よけスプレー

「出会った時の彼はとてもステキだったの。今でもステキなのがムカつく」

印象に残ったセリフは、本編ではなく未公開シーンに収録されていた、養子斡旋所でのメリルのこの一言。第三者にホロリとこぼしたメリルの本音です。

それにしてもダメ男を演じればヒュー・グラントの右にでる者はいませんわね。日本では阿部寛がカブる気がするんだけどわたくしだけ???

キャリー

キャリーはキャリーでもSEX and the CITYのキャリー・ブラッドショーではなく、こちらはアメリカのハイスクールを舞台にした1977年公開のホラー映画。ティーンエイジャーが殺したり殺されたりする映画を、どうやら巷では青春ホラーというらしいですの。

内気な性格で容姿も垢抜けないクラスのいじめられっ子の主人公キャリーは狂信的なキリスト教徒の母親とふたり暮らし。実はキャリーは精神を集中させると物を動かしたりできるテレキネシス(念動力)の持ち主なんですの。ある日体育の授業を終えて女子高生たちがシャワーを浴びているシーンから物語は始まるのですが、この冒頭のスローモーション映像がびっくりするくらい美しくて(おっぱいポロリもあって)、これからホラー映画が始まるとはとても思えません。その時にキャリーの身に起こった“とある事件”をクラスメイトが面白がってからかったことで担任の女性教師はカンカンに。罰として毎日居残り補習を言い渡します。それに反発したリーダー格の生徒クリスが、キャリーへのさらなるいじめを思いつきます。一方、別のクラスメイト スーザンは、キャリーへのせめてものつぐないとして、自分のBFに「キャリーをプロム(卒業の前のダンスパーティー)に誘ってあげて」と頼み込みます。最初はからかわれていると思ってその誘いを拒んでいたキャリーも彼の熱心な誘いを受けることに。そして当日、ピンクのドレスに身を包んだキャリーはプロムの会場へ。が、舞台裏ではいじめっ子クリスの計画が刻一刻と進み、事態は最悪の状況に!・・・と書きながら思い出してみるとなんともかわいそうなお話ですの。最初は本当に冴えない女の子だったキャリーが次第にかわいくなっていくんですもの。プロムでダンスをしているシーンなんかもうどこから見ても恋する女の子。なのに、なのに天国から地獄とはまさにこのことですわ。どういう地獄かは見てくださいませね。

最初はクリスと一緒にいじめる側だったスーザンが良心でキャリーをプロムに誘い出しているという演出がイマイチ分かりづらかったです。その計画に利用されたBFのトミーの心理描写もほとんどありません。というか、あったけれど編集でカットされてしまっている可能性大。
ちょっと気が狂っちゃってるお母さん役の女優さんの演技は迫力満点です。ヨーロッパの宗教画に出てきそうなお顔でハマリ役。学校でも家でも居場所がないキャリーに、誰もが感情移入してしまいます。そういえば頭の悪そうな高校生役で若き日のジョン・トラボルタが出ていたりもします。

監督のブライアン・デ・パルマさんはミッション・インポッシブルを撮った人なんですのね。トム・クルーズが天井から宙吊りになって極秘情報を盗む、ゆきぴゅーの大好きなシーンを撮った人かと思うとなんだかミョーに納得。血しぶきが出るだけのホラーではなく、見ておくべき傑作ホラーだと思いました。『日本版キャリー』をやるとしたらキャリー役は中谷美紀にやってもらいたいです。あ、でも高校生役はちと無理かなぁ、、、

ゆきぴゅーの評価: ★★★★☆
豚の血って・・・
豚の血を頭から浴びたキャリーは放心状態で一人会場をあとに。

沈まぬ太陽

日本アカデミー賞で、最優秀作品賞をとった時に主演の渡辺謙さんが男泣きしていたのが印象的で、いつか観たいなと思っていた映画。“あくまでもフィクションである”とはいえ、25年前の日航ジャンボ機墜落事故を題材にしている作品なので、きのう8月12日に観てみました。

原作は山崎豊子さんのベストセラー小説『沈まぬ太陽』。3時間22分という長い映画なので、劇場公開時には途中で10分間の休憩時間があったと聞いていたのですが、DVDにもあるんですのね、休憩タイム。画面が黒くなって音楽が流れるんですの。ちょっとびっくり。なにはともあれ、出てくる俳優さんが渡辺謙、三浦友和、鈴木京香、松雪泰子、石坂浩二、宇津井健、木村多江、香川照之、小林稔侍・・・・と、そうそうたるメンバーで見ごたえあります。

渡辺謙さん演じる恩地元(おんちはじめ)は、巨大企業“国民航空”の社員。60年代、労組の委員長として“労働条件の改善が日本の空の安全につながる”と会社側と熱く戦った、いわゆる“赤”の人間。統率力があり仲間の信頼が厚い恩地を恐れた会社側は彼を海外に飛ばします。しかもハイチカラチ、テヘランと僻地ばかりで子供からも「お父さん、左遷されたの?」と言われる始末。正しいことを言っているのに報われないという悲しい現実が続きます。自分の出世と引き替えに組合の弱小化に加担した行天四郎(ぎょうてんしろう)=三浦友和は、母親危篤の知らせで緊急帰国した恩地に、「形だけでいいんだ。会社に詫び状を書け。そうすればまた日本に戻れるぞ」とアドバイス。しかし自分の信念を曲げない恩地は動じません。すると今度はナイロビ勤務の辞令が下ってしまいます。最期は単身赴任で孤独に耐えながら約10年の僻地勤務を終えた恩地はようやく日本に帰国します。

時は流れて1985年。国航のジャンボ機が群馬県の山中に墜落し520名の犠牲者を出す惨事に。恩地は遺族の世話係としてやりきれない日々を送ります。体育館にずらりと並んだ棺。そこで遺体と対面する遺族の悲しみのシーンは涙無くしては見られません。会社員として、夫として、そして父親として、それぞれの立場での恩地さんの決断や選択。それから同じ会社で働く、恩地と行天という対照的な二人の男性。それを取り巻く人間模様がこの映画の見どころです。

国民航空の再生のために政府から直々に要請があって会長の座に就任した国見正之こと石坂浩二さんが渋くてカッコイイです。そして、いつ、どんなときでも恩地を影で支える奥さん役の鈴木京香さんの演技が胸にじーんと来ました。夫と手をつなごうと「あなた、」といって手を差し出すシーンが一番好きなシーンです。

見終わって、あーすっきりしたという気持ちになれる映画ではありません。必死で上にはいあがろうとする人、それを裏で阻止しようとする人、ウソを言ったりもちあげたりしながら調和をとるフリをして目を光らせている“エライ人”がいっぱい出てくるんですもの。大きい会社を動かすっていうのは大変なんだなぁ~ってなんだか小学生みたいな感想ですがそれが率直な感想でした。

ゆきぴゅーの評価: ★★★☆☆